「Kokeshine-Rock」 あとがき
FRENZ 2024 にて上映いただいた「Kokeshine-Rock」というアニメーションの制作時のことについて書きます。
https://www.youtube.com/watch?v=cUSDpQPSDr4
概要
「Kokeshine-Rock」は、Ino(chronoize)さんの楽曲です。2017年にリリースされた「朝と夜のうた(Teamウソポヨ)」というEPに収録されています。 主人公のキャラクターは、Inoさんの過去の楽曲MVやジャケットなどに登場していて、自分もよく目にしていました。
https://www.youtube.com/watch?v=oj79NHIms2I
Inoさんの過去楽曲BGA。これらの楽曲タイトルからキャラは「コケシネコ」と呼ばれると推定されます
今回Inoさんのご厚意で楽曲とキャラクターを使用させていただきました。
勢いよく楽しい楽曲に合わせ、分かりやすく誰が見ても楽しめるものを目指してMVを作った、という感じです。
数年前に作っていたもの
勢いの良い曲に合わせてキャラが動く作品を一度作ってみたい、という思いは実は結構前からありました。
楽曲を聞いてしばらく経った後、この曲に合わせてアニメーションを作ると面白いのでは?と思いつき、試しに一度今回と似たコンセプトで手を動かしたことが過去にありました。しかし当時は力及ばず、上手く軌道に乗せることができませんでした。
https://gyazo.com/9686e74898205445df87d82239722432
https://gyazo.com/4452a96765045929a71d0f60971a9974当時の制作物断片。作風は今回と結構変わっていて、主線なしのキーフレーム割合多めのアニメ
「キャラを動かしてみよう」の思いで始めたので、表面的な部分のアニメは楽しんで作れていたものの、肝心の内容がうまくまとめきれなかったのです。その経験もあったので、今回再度取り組んでみるのにあたり、全体の構成や具体の制作内容がある程度固まるまでは動画作業に本格的には手をつけないようにしました。
内容を考え、固める
考えながら作ることもよくあるのですが、今回は内容を考えるフェーズと実際の動画を制作するフェーズをかなり明確に分けました。今回はラフめにアニメーションを作ったので、結果的に動画作業と比べ内容を考える時間が同等か少し長めだった気がします。
https://gyazo.com/c023374add408c408956cac96cec179d曲尺基準で進捗度合いをグラフにしたもの
ネタ出し期間のうちに、構成を考えたり(サビを写真の構図にする、等)、決まった構成の中で具体的に何を描くかネタを出す(1番のホースのシーンに2番の停電中のシーンを対応させる、等)ようなことを先にすべてやっておき、後は作るだけの状態にすることを目指しました。
初期の時点では構図のアイデアを手早く形にしていけると良いですが、画面に向かって考えるより紙に鉛筆などでササッと描いてしまう方が出やすいことがあります。今回はそのパターンで、結構鉛筆で色々描いていました。
https://gyazo.com/c91f9b85836249e93c5c4bfa0ef7d1b1
https://gyazo.com/04ff504cb272610fcda5a94a8f6896c6
https://gyazo.com/b80d16815d7e70123d75d7b2ce48f5dbはじめは雰囲気を掴むために明暗なども描き込むが、構成が固まるにつれ簡素に
この鉛筆ラフのチマチマした感じも我ながら結構好みなのですが、動画化する中で人の目に触れることがなくなります。せっかくなのでイベントのエンディングの寄せ書きパートで撒き散らしてみました。鉛筆の質感、なにかに活かせないだろうか…
https://www.youtube.com/watch?v=o3z33lxv_2w
ラフに作る
一度頓挫していることもあり、制作のハードルは低く設定したいという気持ちがありました。普段排除しがちなフリーハンドでラフな線も取り入れてみようと考えました。
思い返すと、2Dベクターアニメーションを作る上で、無意識のうちに主線のある絵を避けがちでした。単にそういう絵が好きというのもありますが、線の管理を考慮する必要がなく塗りだけ考えれば良いという制作都合の要因も大きいと思います。
効率だけ考えるとそればかりになるので、今回はそういう制約を気にしないで主線のある絵でやってみよう、と軽い気持ちで決めました。
全体的にある程度均一な主線の太さに統一するため、単純な拡縮の動きを極力避けました。(ベクターの強みを捨てている気も)
https://gyazo.com/0852f2491d100f667299ef8605422271主線なしの絵で地味に悩ましい「同じ色で重なる場所」が表現しにくい弱点。今回は境目が描けるので考える必要なし
個人的な好みですが全体通して無表情で淡々としたイメージで作っています。勿論無表情なことが常に適切なわけでなく、特に今回他の方のキャラを使わせていただいている点も考慮に入れて判断する必要がありましたが、今作は日常感とうまくマッチしてくれた気がしています。
また主人公以外のキャラは世界観に合わせて自分で考えてみてます。
https://gyazo.com/196b3657e8ba06c66bd4a87c01d02a8c記号っぽい顔にしようとした形跡
技術的な面
試行錯誤の末、文字以外の動く部分の作成は使い慣れているAnimateでの作業となりました。書き味の良い他のペイントソフトやPhotoshopなどで描くことも考えましたが、やはりベクターの調整のしやすさは普段あまり描かない自分には大きかったです。
制作プロセスはそんなに特筆することはないですが、AnimateやPhotoshopで作った素材各レイヤーを、Timelordを使ってAeに持っていき構成する方法で制作しました。ボタンひとつでやり取りできるのでエクスプローラはあまり見ずに済みました。Battle Axe製品はOverlordやAnubisもよく使っているのですが、なかなか活かす機会のなかったTimelordを一度ガッツリ使えてよかったです。 作った感想
手描きのアニメーション、大変だと痛感しました。自主制作だとその時々で興味あることをやってきているので、毎回作風がバラバラなものを出してる気がしてます。なので今回も楽しんでもらえるのか結構不安なのですが、会場で見た方が感想伝えてくださる度にホッとしてました、ありがとうございました。
曲のパワーもあり楽しい作品になったかなと思います。